僕がまだ大学生だった頃の話です。
その日はとにかくメッチャ寒くて、朝に張った氷が日中も融けずに残ってるぐらいでした。
北国の方にとっては何のことはないんでしょうけど、寒がりな僕には結構こたえます。
そんな寒さにも関わらず、屋外で実習をしなければならず、みんな凍えながら作業しました。
実習を終え、僕はそのまま家に帰ってバイトに行く予定。
パパッと片付けをして駅に急ぎます。
寒さで軽い頭痛がしてくるなか、電車が到着したので待ち時間のロスなく乗り込みました。
車内は帰宅時間帯と重なり結構こんでたと思います。
座席は既に空いておらず、僕も出入り口付近で立って移動することに。
しばらく進むと電車が大きく揺れるポイントがあります。
バランスを崩さないように銀の棒を掴みます。
ここでアクシデントがあったんですよ!
正確には、この時点の僕はアクシデントには気づけず、そのまま少しの時間が経過することに…。
前述の通り、寒い屋外での作業で体が冷え切ってしまい、もちろん手もキンキンにかじかんでました。
そう、手先が冷え過ぎて「感覚」が一時的になくなっていたのです!
その手でバーを握ったところ、隣に立っていた若い会社員風の女性がなぜか僕のことを見てきます。
というか今になって考えると睨んでいたのかも知れません。
どれぐらいの時間が経ったでしょうか?
数十秒だと思います。
何か見られているとは思いましたが、その原因は知る由もなく、そのまま電車に揺られていると、徐々に手の感覚も戻ってきた感じです。
そこで初めて分かる謎の違和感。
「手の下に何かある…?」と思って握り棒のほうを見てみると、なんと僕、隣の女性が棒を握っている手ごと棒を握っているじゃありませんか!
作り話のようなホントの話で、あの瞬間の申し訳なさ・恥ずかしさ・気の焦り…結構なアクシデントでしたね。
当然、瞬間的に手を離し、女性に「すいません!」と謝りました。
突然に見知らぬ男から冷たい手を置かれてビックリされたでしょうねぇ。
痴漢騒ぎにならなくて本当に良かったです。
乗客がドンドン増えてきて車両を移るのも難しそうでしたし、移動するのも逆に気まずい感じがしたので、その場に留まり、ひたすら時間が過ぎるのを待ちました。
それ以後、件の女性とは一度たりとも駅や電車で顔を合わせてないのがせめてもの救いです。
寒い冬が来ると思い出す、かじかんだ感覚のない手で見知らぬ女性の手をしばらく握ってしまったという話でした。
手袋して、ちゃんと防寒しようゼ!